中村健一先生の書かれた「ブラック学級づくり」について書いていきます。本書は、建前抜きで、「プロの教師」として、子どもたちとどのように接するべきか書かれた本です。どの教師にもとっても為になると思いますが、私はHSP気味だったり、優しすぎたりする教師にこそ読んでほしいと思います。
例えばこんな悩みを抱えていませんか?
- 「気になる子どもがいると、ついその子に注意がいってしまう」
- 「子どもの空気を読んで行動してしまうので、指導がうまくいかない」
- 「保護者が自分をどう思っているかが気になる」
このような先生は思いやりがあり共感力が高い人が多いと思います。一方で、他の先生と比べてしまい、指導力の低さを気にしてしまったり、心を病んでしまったりすることもあるのではないでしょうか。本書は、どんな教師でも、子どもたちを成長させるための「策略」を授けてくれます。私達をプロの教師に導いてくれるこの一冊。興味をもっていただけましたでしょうか?
今回は、私が大事だと思ったポイントをググっと絞って3つ。そして本書を読んで私が感じたことを述べていきたいと思います。
子どもたちには心を許すな
最初の研修などで、子どもへの共感力が大切だとか教えられますが、真逆を行くような教えです。これはどういうことでしょうか。
中村先生は「教師と子どもは立場が違う。教師は教室を統率するリーダーなのだ」といいます。ご機嫌を伺うのではなく、先生と子どもは立場が違うことをはっきりと伝えることの必要性を述べています。優しいだけ、面白いだけではなく、しっかりと指針を伝え、尊敬されるリーダーこそ、信頼に値するということです。
子どもだろうが人間として尊重することは当然です。しかし、クラスとまとめる担任として、子どもとすべて同じ目線に立つことは、危険と言えます。大人だろうが、子どもだろうが平等だという考えは、リーダーとしてぶれることに繋がるからです。
本書では例として、「先生だけ長ズボンでずるい」と言われる先生を挙げています。子どもと同じように先生が半ズボンにするのはどう考えてもおかしいですよね。すべてを子どもと平等にしようとすると、子どもになめられるような言動を誘発してしまいます。このように、先生と子どもという立場を明確にすることで、信頼を勝ち取ることができるということです。
「策略」は「点」ではなく「線」で
中村先生が生徒指導で意識されているのは、「褒めるために、叱る」ということです。直情的に叱ってしまうことがありますが、それは「点」で叱っているに過ぎません。
そうではなく、「厳しく叱ったその先、褒めるというゴールを目指すことが大切である」ということです。褒めるというゴールを設定することで、叱ることにも余裕ができるそうです。
これは経験から言っても、子どもが成長しそうな指導法だと思います。叱られただけだと反抗的になることもあるかもしれませんが、褒めることがセットにすることで、望ましい行動が子どもに価値づけられるからです。
どうしてもだめなら流す
中村先生は本書で、「今、教師に一番必要な力はなにか?」という問いに対し、「流す力です」と答えています。それほど、大事な力だということです。
もちろんすべて流せばよいということではありません。選択肢の一つとして、「流す」ことを加えて、策略を巡らせることが大切ということです。
真面目で誠実な先生ほど、物事にすぐ気づき、対処しようとしてしまいます。しかし、そこに「策略」がなければ、失敗してしまうことも多いです。例えば、「発達障害をもつ子の問題が、クラスみんなに分かってしまう」「やんちゃ君と対峙し、反抗的にしてしまう」ということが考えられます。こうなるとクラスはどう考えても上手くいかないですよね。
大事なことは、何でもかんでもすぐに対処しようとするのではなく、「流す」ことを交えて、慎重に策略を巡らせることです。このような冷静な対応が、プロの教師として必要だということです。
きれいごとだけでは上手くいかない(感想)
本書は、現場で困り感をもっている先生がすぐに再現できるような「策略」を、たくさん紹介されています。「ブラック学級づくり」という名の通り、非常にしたたかで、人によってはドライな内容だと感じるかもしれません。しかし、子どもたちにとって何が大事かを考えたとき、安心して学校に通うことが一番なのではないかと思います。本書は最も効果的にそれが実現できる内容だと感じます。
優しい先生、若い先生などは様々な考えを「こうしたい」という思いをもたれている方も多いと思います。しかし、現実はきれいごとだけでは上手くいきません。「なんか上手くいかないな」と感じられたら、ぜひ本書を手に取ってみてください。きっと、解決の糸口が見つかるはずです。
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